当事者研究基本用語集

当事者研究 基本用語集

1.お客さん
人の行動に否定的な影響を与える認知や思考のこと。例えば「ばーか、お前なんか何もできないくせに、仕事なんか辞めろ辞めろ。」などのようなマイナス思考で頭の中が一杯になった状態を指す。こうなると爆発したり、引きこもったり、逃亡したりしてしまう。

2.幻聴さん
べてるでは”幻聴から「幻聴さん」へ”と言われているように、辛く嫌な声(例えば「死ね」「バカ」など)の幻聴を、親しみを込めて「幻聴さん」と呼ぶようになっている。例えば辛い幻聴さんの時には「幻聴さん、お願いします。今日は疲れているのでもう休ませてください。幻聴さんもお休みください。」などのようにやさしく接していると、幻聴さんが優しくなったりする。

3.爆発
自分自身との関係や人間関係に行き詰まったりしてストレスが溜まったときに、人や物に感情をぶつけてしまうこと。

4.自己病名
お医者さんなどの専門家がつける病名ではなく、当事者が自分で考えた病名。例 千高さん:「統合失調症ドラマチックタイプ」 小泉元総理大臣の幻聴さんと恋仲になったことがある。 小川さん:「明るい躁うつ病笑い型」 べてるの金曜ミーティングの名司会者。 早坂さん:「精神バラバラ状態」 ミスターべてるの早坂潔さん。みんなも自己病名を考えてみて!

5.バラバラ、ぱぴぷぺぽ
調子が悪い状態を表現した言葉。または病気の自分や具合の悪い仲間のそのままの様子を表現した言葉。
「ぱぴぷぺぽ」は元々早坂さんが発作を起こしたときに発した「ぽっぽっぽぅ~」からできた。「昨日ぱぴぷぺぽ状態だったね。」などのように用いる。
「バラバラ」は早坂潔さんの自己病名「精神バラバラ状態」以外にも、べてるのバラバラ状態を商品化した「ばらばら昆布」(昆布の等級も長さもバラバラで入っている使いやすくお得な商品)にも用いられている。

6.なつひさお & くどうくどき
べてるの林園子さんが、幻聴さんや否定的な認知によって“くどく”なってしまう症状を「くどうくどき」と名づけたことから始まる。具体的には昼でも夜中でも友人やスタッフに電話して質問=確認作業をしたり、他にも何度も病院の救急外来にかかったり、電卓で計算をしなおしたり…。
当事者研究のミーティングを重ね、どういうときに「くどうくどき」が出るか、を研究した結果が「なつひさお」である。
な:なやみがある。
つ:疲れている。
ひ:暇である。
さ:さみしい。
お:お腹が空いている。お金がない。お薬があっていない。
*林さんの「なつひさお」研究は多くの人にも当てはまり、今では良い参考となっていますが、林さんは2004年11月5日、突然の急性心不全により天国に召されました。でもべてるのみんなの心の中には今も林さんとなつひさおが宿っています。

7.松子系
自己病名の一つで「嫌われ松子の一生」という小説(映画にもなった)がいわゆる「パーソナリティ障害系」の女性であったところから取ったネーミング。
「松子系」の特徴
・人間関係のドロドロしたトラブル
・摂食障害
・不安発作
・自傷・他害行為
・異性問題
・大量服薬
・引きこもり
べてるでも「統合失調症」とこの「パーソナリティ障害=松子系」に大きく二分されてきた。パーソナリティ障害=松子系の生きづらさを研究しているグループで立ち上げたのが「むじゅん社」である。人と人との「ふれあい」の取り戻しの体験を通して回復を求めている。

8.ぶらぶら族
特に仕事もせずぶらぶらしているように見えるが、あっちへぶらぶらこっちへぶらぶらしながら人と交流している人たち。べてるのお店、地域のお茶の間「カフェぶらぶら」はぶらぶら族から取った名前。
明るい統合失調症、松本寛くんや道端でよく寝ている岡本さんもぶらぶら族。
特徴
・友達が増える。
・人の動きがわかる。
・語る機会が増える。
・思わぬ発見がある。
・歩くのでダイエットになる?
ぶらぶら族は一見簡単になれそうだが、人とのコミュニケーションが欠かせないので意外と難しい。

9.外在化
「人」とその人が抱える「問題」を分けて捉える知恵。べてるでは「問題を」ユニークに表現し、キャラクター化したりして分かりやすく語る。本人がSSTや当事者研究を通して、この問題を「語る」ことによって、仲間や援助者にもその人の共通理解が深まります。
例:早坂潔さんの場合
外在化① 俺は時々誰かの愛が欲しくなってわがまま言って甘えたり、寂しくなったりノミの心臓になったりしてドキドキしたりする。
外在化② そうかというとアッパラパーのぱぴぷぺぽ状態になって、人にあたったり偉そうな態度を取ったり爆発したりする。

10.苦労
失敗や行き詰まり、病気、不安、悩みなどの様々なエピソードに愛着を示し、その大変な中を生きてきた当事者への心からのねぎらいと尊敬を込めて「苦労してきたネ」と言う。

11.弱さ
「弱さ」とは人と人がつながり、その場が元気になるための「心の栄養素」。潤滑油のように弱さを循環させるために「弱さの情報公開」を大切にしている。

12.順調
べてるのみんなは毎日生きているだけで病気も出るし苦労もつきない。しかしそこから逃れるのではなく、その苦労をむしろ予測して、予定通りその悩みや苦労に出会ったときに「それで順調!」という。

13.誤作動くん
体で感じる圧迫感のこと。身体が勘違いして本人が振り回されてしまう。
べてるでいう「お客さん」は気持ちに起こるマイナス思考であるが、「誤作動くん」は身体に起こるお客さんのこと。

14.サイン
当事者研究の中で開発されたもの。「自分を助けるための技」の一つで、簡単な「サイン」を仲間に出すことで気持ちを伝えることができる。
例1.サインを初めて考案したのは吉野さん。「サトラレ」が来て辛いときに、親指を立てるというサイン。このサインを見た仲間は「大丈夫だよ」と同じく親指を立てたサインを返す。これで吉野さんは自分は人に受け入れられていると安心できる。
例2.トントンとドアを叩くまね。トントンサインという。これも辛いときに出す。トントン返されると、通じている安心感がある。

15.ピアサポーター
「今、あなたに一番必要なのは「薬」ではなく、人とのつながりである「仲間」だよ」と川村Dr.がよく言います。べてるでは退院したばかりの仲間やこれから町で暮らす仲間などに、ピアサポーターとして同じ仲間を処方します。辛いとき寂しいとき困ったときなどにサポートしてもらいます。浦河ではピアサポーターがいることで、病院への救急外来が激減!ぜひ全国でもお試しあれ。