『ほっとかれ被害妄想現象』の研究

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研究者:久保田 誠

■苦労のプロフィール
久保田さんはいつも人に上から目線で話しかけられているというお客さん(頭の中のマイナスの自動思考)に悩まされていました。しかし長い研究の末、じつは相手が上からの目線で久保田さんを見ていたのではなく、久保田さん自身が相手の前で自分からちっちゃくなって下から見上げていたのではないかということが分かってきました。
それからというもの、久保田さんはその「お客さん」対策として自分の手に自分を助ける言葉を書いて自分を励ますという対処法をしています。

■ある日の出来事
べてるでは「べてるまつり」にむけて「四丁目ぶらぶらざ」の改修工事をしています。ワークショップとしてその工事にべてるのメンバーも多数参加することになりました。久保田さんは、そこでみんなと土を足で踏んで混ぜていました。その時、遠くでスタッフが立ち話をしています。すると久保田さんには「僕はスタッフに相手にされてない」という「お客さん」が来ました。久保田さんは、自分が足をまくり勢い込んで土を踏んでいるから、スタッフはそれを見て「調子に乗っているから放っておこう」と思っていると勝手に判断し、つらい気持ちになっていました。久保田さんが言うには「べてるに来て一番つらかった」そうです。そこで当事者研究のおなじみの実験として、実際に土を踏んでいるところをみんなで再現してみました。

実際に再現してみるとまたまた寂しい気持ちになるということがわかりました。

■この現象に対してのみんなの意見
「自分を見失い現象」—大勢の中にいると自分を見失う事がある。
「かまってほしい現象」—人が100人いれば自分に対する関心が100分の1になってしまうので余計にかまって欲しいと思う。
「放っておかれ被害妄想現象」—自分は調子に乗っていると思われて、わざと放っておかれているという被害妄想に陥る現象。
「どうせ僕なんか現象」—昔のいじめられた経験を思い出して「どうせ僕なんか」と思ってしまう現象

■どうしてこのような現象が起こるのか?
研究を進めていくうちに、久保田さんの場合一人でいるときより大勢のなかにいる方が孤独を感じるという現象が起こるということが分かってきました。
久保田さんは実際、友達もいるし、話し相手もいる。しかし大勢の人のなかにいると「かまってもらってない」という「お客さん」にジャックされて上記のような誤作動(現象)が起こります。
また「かまってもらってないお客さん」にジャックされる条件も分かってきました。

■「かまってもらってないお客さん」にジャックされる時
◇自分にバッテンをつけている時(自分への評価がマイナスの時)
◇自分で自分のことをかまってない時

・自分にバツを付けている時や自分で自分の面倒を見てないときほど他の人にマルをつけてもらおうとする現象が起こる。

■手に書いた言葉の効果
今、久保田さんは「上から目線のお客さん」に長年悩まされていましたが手に言葉を書くという技でその「お客さん」に対処しています。自分の手に「自分の良かったこと」や、「自信が持てること」、「成功した体験」などを書いておいて「上から目線のお客さん」が来た時にその言葉を見るとスッと気持ちが楽になるそうです。

今回は手に文字を書いていなかったらつらかったということもあるようですが、今回久保田さんは周りの人に話しかけるとか、土踏みに集中するとかしてなんとか対処したそうです。

久保田さんはこれから「かまってほしい現象」に対処するという課題を、SSTを使って実際にコミュニケーションをする練習をするそうです。

久保田さんの当事者研究はまだまだ続きます。