・イギリスで当事者研究の紹介をしてきました

メンタルヘルスの自己認識‐日本とイギリスとリカバリーに対する新たな試み
浦河べてるの家 山根耕平

9月24日から9月30日の日程で、イギリスで当事者研究の紹介を中心とする交流を持ちましたのでご報告します。
参加者は、浦河べてるの家からは向谷地生良さん、亀井英俊さん、池松麻穂さん、山根耕平、東京大学からは石原孝二先生、山田理絵さんの6名でした。
メインプログラムとして訪れたのはロンドンの東に位置するノーウイッチという町にあるイーストアングリア大学でした。ここでは当事者研究を紹介する「メンタルヘルスの自己認識‐日本とイギリスとリカバリーに対する新たな試み」と題するワークショップを行いました。このワークショップは次の3つのテーマを掲げて議論を行いました。
① 日本の当事者研究の概念の紹介
② イギリスのリカバリーカレッジの展開についての議論
③ 日本の当事者研究とイギリスのリカバリーカレッジという患者本位の革新的な取り組みの比較
この会はまず「お茶会(Coffee and tea)」から始まりました。さすがはイギリス!という感じのお茶会のゆったりとした雰囲気で会は始まりました。続いて主催者のトム・シェイクスピアさんがユーモアを交えて日本から来た私たちを歓迎してくださり、日本の北海道の浦河で始まった当事者研究を簡単に紹介してくださいました。
次に向谷地さんが北海道浦河町や浦河べてるの家の概略の紹介をして当事者研究の背景や成り立ちについて日本語で説明し、それを石原先生が英語に訳してくださいました。続いて亀井くんが自分の幻聴、幻視やそれに対応するための褒め褒め日記などについて英語で説明を行い、さらに山根が某自動車会社で受けた脅迫が記憶に焼き付いてしまって苦労してきたことやべてるの幻覚&妄想大会について英語で説明しました。
ここでまたコーヒーブレークが入りました。イギリスの人はお茶とコーヒーが本当に好きなんだなぁと思うとともに、そのお茶の合間にする会話にもユーモア―を忘れずに笑いを入れていることが印象的でした。
ここからはイギリスのリカバリーカレッジの報告でした。まず看護師のスー・ホーレットさんが支援者の立場からのリカバリーカレッジの概略を簡単に説明して、すぐにピア・チューターのアマンダ・グリーンさんに引き継ぎました。アマンダさんは躁うつ病で苦しんでいましたが、患者も支援者も同等な立場に立って回復を学んでいくリカバリーカレッジで回復していく様子を克明に説明してくださいました。
最後に石原先生が患者本位の日英のメンタルヘルスに関するアプローチの違いを、当事者研究を基盤においてわかりやすく説明してくださいました。
ランチを食べた後の午後は9の小グループに分かれて討論を行いました。私たちは9番目のグループに配属になり、「リカバリーカレッジモデルは、日本の中で機能するか?」という議題の議論を行いました。この中では、日本は診療報酬がメインになっているところがイギリスと異なるという意見や、イギリスでは医療関係者も当事者も回復プログラムを国レベルで文書化して、それを計画的に実行しているところがイギリスの成功要因なのではないかという意見が出ました。
このように短い時間ではありましたが、当事者研究をイギリスの方々に紹介し、同じく先進的なリカバリーカレッジとの比較討論が活発に行えたことが、なによりの成果ではないかと思います。