多様な仲間が安全に当事者研究できる場作りについての勉強会

主催:東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野、豆の木ネットワーク、浦河べてるの家、当事者研究ネットワーク​

日時:2020年6月12日(金) 13:30-15:30​

アクセシビリティ:聴覚障害や、聴覚情報処理障害、その他の理由で、音声のみでの情報取得が困難な方のために、UDトークによる情報保障がつきます。

 

趣旨説明​

当事者研究の場には、障害、ジェンダー、過去の経験、性的指向、エスニシティ、社会経済的状況などの面で、多様な人々が集います。この多様性があるからこそ、ひとりでは思い付かない発見が起きます。それこそが当事者研究の醍醐味のひとつです。​

しかし、ひとつのグループでこれらすべての多様性をカバーすることは難しいのも事実です。その結果、「暴力被害を受けた女性の困難に対してどのタイミングで何をなすべきかは肌感覚でわかるけれど、聴覚障害のあるメンバーへの情報保障のノウハウは持たないグループ」や、「幻覚妄想状態に対してどのタイミングで何をなすべきかは肌感覚でわかるけれど、女性の暴力被害への対応には慣れていないグループ」、「身体障害の分野の知恵は豊富に持っているけれど、ジェンダー、依存症、孤立の問題はあまり得意ではないグループ」などが存在することになります。​

それぞれに守備範囲の異なるグループが、互いの知恵やノウハウを分かち合うことなしに、それぞれバラバラに当事者研究をおこなっていると、守備範囲から外れたメンバーに対して、悪意はなくても、同化や排除を強いることになってしまいます。単にそのグループが、他のグループの知恵やノウハウを知らないから支援できていないだけなのに、早々と自らの無力を認めてしまい、「当事者研究しよう」と呼び掛けてしまうことは、素早く適切な支援に繋がる機会をメンバーから奪い、苦労している本人に際限のない自己反省と過剰適応を迫るだけのテクノロジーとして、当事者研究が使われてしまうことになります。​

無力を認めるためには、それに先だって、すでに他のグループや専門家が有効な知恵やノウハウを持っていないか、十分に調べたり、相談する必要があるのです。言い換えれば、当事者研究は、他のあらゆる研究と同様、先行研究を知ることの先に行われるものです。​

このような問題意識に基づき、この研究会では、様々な守備範囲を持つ当事者グループが互いの知恵やノウハウを交換したり、自分達だけでは分からない苦労について、ヒントになる知識をもつ専門家を呼び、当事者コミュニティや専門家コミュニティの中に蓄積された先行研究を共有することを目的としています。​

今回は第一段として、組織研究の知見を参考に、多様なメンバーそれぞれが得意な部分を尊重され、安全に弱さや困難をオープンにでき、グループ全体として知恵や力を出しあえる組織を実現するために、「謙虚なリーダーシップ」について学びます。そして、この謙虚さが、当事者研究の歴史や理念、態度と多くの共通点を持っていることを確認します。​

プログラム:​
13:30-13:50 講義①:勉強会の背景にある問題意識​
13:50-14:00 分かち合い①​
14:00-14:20 講義②:謙虚なリーダーシップ​
14:20-14:30 分かち合い②​
14:30-14:50 講義③:謙虚さと当事者研究​
14:50- 分かち合い③​