スキルバンク

当事者研究「スキルバンク」
ここで言うスキルとは、苦労や問題が起きたときに自分でできる自己対処(自分の助け方)の方法を指します。当事者研究の中で生まれたスキルを紹介します。

NO1.方法名:幻聴さん丁寧お願い法   :林園子
1. 苦労の場面
幻聴さんが「デブ、ブス、お前なんかだめだ…」と悪口を言ってきて辛いとき
2.自己対処〈スキル〉
幻聴さんと闘ったり反発するのではなく、「今日はつらいので、テレビを見ながらゆっくり休みます。もう夜なので、幻聴さんも帰ってゆっくり休んでください、お願いします」と丁寧にお願いする。
3.効果
丁寧にお願いすると、幻聴さんは安心して帰ってくれた。最後に必ず「お願いします」と言うのがコツで、「お願いします」を添えると、幻聴さんに対して礼儀正しくできるので、安心できる。声に出して言うと、お願いする実感を持てる。外出中など、人目が気になるときは頭の中で何度も言って、家に帰ってから口に出して言ったりするなどの工夫も効果的である。ポイントは1度で効果がなくても、繰り返して何度もお願いすること。10回で帰ってくれなくても、20回言ったら帰ってくれたこともあった。

NO2.方法名:な・つ・ひ・さ・お式苦労の見極め法   :林園子
1.苦労の場面
何度も同じことを聞いたり、ひとにしつこくしてしまう苦労で悩んでいた時、、どんな場面で「くどき」が現れるのかを検証した結果、な…悩みがあるとき→文字通り、悩みがあるとくどくなる。つ…疲れているとくどくなって、とらわれがひどくなる。ひ…週末や夜など、暇疲れするとくどくなる。さ…さみしい時。夜ひとりでいる時など。お…お金がないとき、お腹が空いた時、お薬を飲み忘れたとき。の主に5パターンに分類できた。
2.自己対処(スキル)
これを基に日頃から「なつひさお」を使って自己チェックをし、その時の状況にあった自己対処をする
3.効果
自分の状態を「なつひさお」の5項目でチェックすると、安心できるようになった。幻聴さんやとらわれにジャックされているときは、自分ではなかなか自分の状態に気づきにくい。そのようなときでも、誰かと一緒にチェックしたり、「今のなつひさおはどう?」と声をかけてもらえると、自分で対処できる。

●「なつひさお」とそれに伴う自己対処の例
な(悩みがあるとき)→とにかくすぐ相談。仲間のところに行って、自分を語る。
つ(疲れているとき)→とにかくゆっくり休む。たっぷり眠ると翌朝にはけろっとしている。
ひ(ひまなとき)→人とおしゃべりをする。体を動かす。好きな音楽を聴く。など
さ(さみしいとき)→共同住居に遊びに行く。誰かに電話する。
お(お金がない、お腹が空いた、お薬を飲んでいないとき)→食べるのが効果的。お薬がないときはすぐ受診。

NO3.幻聴さん手足ぶら下がり歩行困難状態脱出法  :亀井英俊

1.苦労の場面
出勤途中に幻聴さんが手足にぶら下がり、「仕事に行ったらいじめられるぞ」と言われ、立ち往生したとき
2.自己対処(スキル)
「幻聴さんいつもありがとうございます。良かったら一緒に仕事に行きましょう」と幻聴さんを仕事に誘った
3.効果
幻聴さんも一緒に連れて職場に行けるようになった。

NO4.家族の苦労よみがえり型誤作動圧迫への対処法    :早坂潔
1.苦労の場面
酒を飲むと暴力的になる父親が怖くて、いつもびくびくしていた記憶がよみがえり、ぱぴぷぺぽ状態になる。
2.自己対処(スキル)
父親と遊んだりお祭りで肩車をしてもらった思い出を大切にして、「父さん、ありがとう」と一日三回唱えるようになった。
3効果
圧迫が無くなりぱぴぷぺぽ状態に陥らなくなった。
(注)ぱぴぷぺぽ状態…調子が悪い状態を表現した言葉。または病気の自分や具合の悪い仲間のそのままの様子を表現した言葉。いまさら聞けないべてる基本用語集の5参照

NO5.森式注意拡散法    :森亮之
1.苦労の場面
外出した時に周りの人目が気になるとき
2.自己対処(スキル)
視線を一つに定めないで(気持ちを一つに集中させないで)、自分から積極的に色々なところを見る。
●例  牛丼屋の看板を発見…「牛丼かあ、しばらく食べてないなあ」
〇〇店・・・「ここのお店変わったんだ。前の店は閉店したのかな」  等など
3.効果
以前は、外出時の圧迫が辛くて外出を控えていたが、この方法を使うと外出できるようになった。

NO6.B&Bサイン外出法     :森亮之
1.苦労の場面
外出した時に、通行人の話し声やすれ違う車の運転手の目線が気になるとき
2.自己対処(スキル)
圧迫を感じたとき「今圧迫キャッチ!」と親指を立てて知らせる。そうすると同伴者も「ナイスキャッチ!」という合図で親指を立てる。B&Bとはビッグ&ボスの略で親指のことを指す。
3.効果
そのやり取りをしていると、外を歩くことができた。人とつながった感覚や、自分の弱さを受け入れられた気がして安心した。大変だが自信を持つこともできた。

NO7.森式ストレッチ法       :森亮之
1.苦労の場面
列車に乗っていると人目が気になってつらくなり、体が固まるとき
2.自己対処(スキル)
あえてストレッチをするなど体を動かす。首を回したり手をマッサージするなど。
3.効果
からだがふっと軽くなり、気持ちも楽になった。

NO8.森式風景観察法       :森亮之
1.苦労の場面
人気のないところを歩くとこだわりがでてきてこだわり続けてしまう。景色の実感をとらえられなくなり圧迫感が増し、結果家に帰ることになってしまう。
2. 自己対処(スキル)
人気のないところを歩き、こだわりの兆しがくると、目の前の風景を観察して言語化する。
●例 「太陽」「広い」「寒い」「遠い」「近い」など
3.効果
言葉にするとそれに伴って自分の気持ちも動き、腑に落ちてそこにいる実感が持て、歩くことができる。

NO9.森式注意変換法       森亮之
1.苦労の場面
外を歩くと人に見られている圧迫に襲われて不安になり、足早に歩くことで気を紛らわし、結果かなりの疲労が蓄積する。
2.自己対処(スキル)
不安になると街をいろいろ観察し、電柱の数を数えるなど意識を変えてみる。心の中で通行人に「よ、元気?」など話しかけてみる。
3.効果
受け身の感覚でいるとつらいが、自分の方から意識を変えてみていると圧迫感がなくなり、安心して歩ける。

NO10.森式意識集中法      :森亮之
1.苦労の場面
集中力がたもてない、何にも集中して取り組めないとき
2.自己対処(スキル)
部屋に閉じこもり、とにかく一人になる時間を作る。
3.効果
最初は意識が定まらないが、時間が経つにつれて色々なことが思い出されて、非常に集中力が増してくる。そうすると「よし、何かしよう」という気が起きてくる。

NO11.森式峠乗り越し法          :森亮之
1.苦労の場面
JRやバスに乗るときは、どんな場合でも不安になる。
2.自己対処(スキル)
ある程度時間が過ぎ、峠を越せば安心することができるという法則を思い出す。
3.効果
最初は不安だがこれを信じればたいていのことにチャレンジできるようになった。

NO12.森式もうやるしかないよな法         :森亮之
1.苦労の場面
どんなに体調が良くても不安になる
2.自己対処(スキル)
「もうやるしかない、乗り切るしかない」と決死の覚悟で割り切る。
3.効果
不安はあっても何とかやり遂げるとげることができる。

NO13.森式対人意識確認法          :森亮之
1.苦労の場面
人と話すときに不安になって、人とコミュニケーションが取れない。
2.自己対処(スキル)
「話している相手も上手に意識を使っているんだ」ということを自分自身で確認、理解しながら話す。
3.効果
相手と話ができるようになる。

NO14.森式場馴れ法           :森亮之
1.苦労の場面
苦手なこととにチャレンジするときや、緊張しやすいシチュエーションに身を置かなければならない時、とにかく不安になる。
2.自己対処(スキル)
とにかく場数を踏む。苦手なことこそやり続ける。
3.効果
不安になるのは変わららないが、「少しくらい不安でも大丈夫だ」という気持ちになって、心のどこかでは安心していられる。

NO15.森式相手目線確認法        :森亮之
1.苦労の場面
交通機関を利用するとき、緊張し不安になる。
2.自己対処(スキル)
JRなどに乗っていて不安になったら、まず周囲の状況を把握し、向かいに座っている人の顔をちょっと見る。
3.効果
相手が安心して乗っているのがわかると、自分んも安心できる。

NO16.森式場の雰囲気をわきまえる法         :森亮之
1.苦労の場面
ミーティングに参加するとき、外来にいったとき、人のいる場所では不安になり緊張する。
2.自己対処(スキル)
その場の雰囲気を把握して、そこがそういう場であるかをわきまえておく。
3.効果
少し安心できる。

NO17.森式意識先取り法         :森亮之
1.苦労の場面
目の前に人がいるとき、前に座っている人のことがとても気になり、緊張し不安になる。
2.自己対処(スキル)
目の前にいる相手の意識や考えていることをあえて先取りし、てこちらで考えてしまう。
3.効果
気にならなくなる。

NO18.幻聴さん性格改造法          :亀井英俊
1.苦労の場面
自分への悪口や嫌なことを言ってくる幻聴さんにジャックされるとき
2.自己対処(スキル)
日頃からメモを持ち歩き、人がほめてくれたことや自分の良いところ・長所、仲間から聞いたことで「いいな」と思ったことをメモしておき、幻聴さんに悪口を言われるたびに、そのメモを見る。
3.効果
幻聴さんも悪口ではなく、ポジティブなことを言うようになった。自分をほめてくれたりもするようになった。

NO19.ハンドパワー                  :久保田誠
1.苦労の場面
自分よりずっと頭の回転が速い人や、話の上手な人、若いのにしっかりした人と一緒にいるとだんだんと自分が小さくなっていき、劣等感や自信のなさが大きくなってつらくなり、「自分はダメだ」というマイナス思考に陥る。またその気持ちの裏返しで、相手に爆発してしまうこともある。
2.自己対処(スキル)
自分の力が発揮出来たときの思い出や、充実した経験が得られた時のキーワードを手のひらに書いておき、自分が上から見られているような圧迫を感じたり、そのことで人に当たりそうなときにそれを見る。また、そのキーワード書いて思い出したり、飲み込んだりする。
3.効果
気持ちがおだやかでいられる。

NO20.まず・とにかくあいさつ法             :柳一茂
1.苦労の場面
家の前を通る学生や近所の人たちの会話が「デブ」「バカ」など自分への悪口に聞こえ、引っ越しを繰り返していた。場所を変えても同じことが起きた。
2.自己対処(スキル)
受け身でいないで、自分の方から近所の人にあいさつしてみた。すると相手も「こんにちは」と応えてくれた。
3.効果
「ここに僕が住んでいますよ」「自分はここに居てもいいんだ」という気持ちになってうれしかった。また、挨拶することで一日を爽やかな気分で過ごせる手ごたえを感じ、ここに住み続けるぞという決意も持てるようになった。人間関係においても受け身でいるのではなく、自分から話しかけたり、発信することが大事だと思うようになった。

NO21.エブリデイ・ミーティング            :柳一茂
1.苦労の場面
新しい住居に入ることになって、そこでも学生が住居の前の道を通るのが怖くて不安だった。
2.自己対処(スキル)
入院中に仲良くなった友達が同じ住居で、彼の部屋へ毎日遊びにいくようになった。そこで一緒に聖書を読んで祈るようになった。
3.効果
このミーティングを続けることで、引っ越しせずにすんでいる。

NO22.圧迫・幻聴さんの好きなものを食べる(仮)       :林園子・その他メンバー多数
1.苦労の場面
例えば夜ひとりになった時に、昼間の出来事を思い起こして周りの人から言われたことが気になり、「自分は嫌われてるんじゃないか…」「見捨てられるんじゃないか…」というとらわれにジャックされたとき
2.自己対処(スキル)
「なつひさおチェック」をしたところお腹が空いていたことがわかった。更に苦労の経験と腹ペコとの関係を調べたところ、圧迫さんや幻聴さんの好きなものを食べると特に効果的であることがわかった。
3.効果
とらわれが小さくなることがわかった。
幻聴さんの好きなものは三者三様…●例:キムチチャーハン、ブルガリアヨーグルト、ミルクティー、焼き芋等

NO23.仲間カード              :森紀子
1.苦労の場面
仲間の声が自分を嫌っているような怖い声に聞こえる幻聴さんの苦労があり、仲良くしたい友達の声も怖く聴こえて挨拶が出来なかったり、仲間の中にいけない。
2.自己対処(スキル)
仲間が書いてくれた応援メッセージをいつも持ち歩き、眺める。
3.効果
仲間の声が怖く聴こえても、カードを見て「そうだ、大丈夫なんだ」と思って安心できる。幻聴さんも一緒に安心して外出できる。

NO24.確認法(仮)             :森紀子
1.苦労の場面
仲間に話しかけられた時の声が自分を嫌っているような怖い声に聞こえる苦労があるとき。
2.スキル(自己対処)
自分のことが嫌いか、思い切って確認してみる。
3.効果
誰も私の事を嫌っていなかったことがわかって安心できた。

NO25.体感幻覚おもてなし法             :臼田周一
1.苦労の場面
朝起きると体に悪口を書かれたり、背中などに痛みを感じることがある。
2.自己対処(スキル)
①体感幻覚の症状をキャラクター化し、「専属メイク師のイクメさん」と「専属整体師のタスケさん」という名前を付けた。そして「いつもいつもご苦労様です」というおもてなしの気持ちを込めて、枕元に缶コーヒーを置いておく。
3.効果
ある朝起きたら、顔に「ありがとう」と書かれていた。それ以来毎晩おもてなしをすると以前のようなひどい落書きやなどは減った。

NO26.幻聴さんさらり漂白法              :木林美枝子
1.苦労の場面
幻聴さんやサトラセさんが来て辛い時
2.自己対処(スキル)
幻聴さんやサトラセさんをさらーっとふき取るようなイメージで、空中に虹を画くようにして手を振る。「透明~!」と言いながら手を振るのもまる。
3.効果
幻聴さんは完全にはなくならないけど、薄くなる。

NO27.携帯ワンセグでソワソワ解消法           :木林美枝子
1.苦労の場面
サスペンス好きで、べてるで爆発やケンカが起きるとワクワクしていたが、最近あまり事件もなく、代わりに刺激を求めて昼ドラを見るために家に帰っていたので、お昼になるとソワソワしてしまう。
2.自己対処(スキル)
携帯電話をワンセグ機能付きにチェンジした。これで家に帰らなくても昼ドラが見られる。
3.効果
「昼ドラ」の時間になるとソワソワしていたが、ワンセグでいつでも見られると思うとあまりドラマにこだわらなくなった。

NO28.もどき指数サイン            :鈴木真衣
1.苦労の場面
「死にたい」誤作動が起きて、コミュニケーションをとるのが億劫になり、ネガティブな感情が高まって、リストカットをしたり、地元に帰ろうと荷物をまとめたりの行動をとってしまう。
2.自己対処(スキル)
コミュニケーションがとれなくなり物事が億劫になっているときは「自分もどき」が出ているとわかった。そこでその時々の状態を周りに伝えられるように、もどき指数サインを開発した。周りに「今どれだけ?」と聞かれたとき、指の本数でもどき指数を表して仲間に伝える。
3.効果
これによって「もどき」になっている自分にも気づくことができ、自分を助けるきっかけづくりになった。行動化にもブレーキがかけられるようになった。

 

No.29(人間関系のスキル)RPGコマンド式コミュニケーション法 研究者:木村恵美

1. 苦労の場面

実家アレルギーで犬のいびきが祖母のネガティブな言葉に聞こえ始める 要介護の祖母への母の対応に不信感がつのる

2. 自己対処(スキル)

自分の行動をRPGゲームのコマンドに当てはめて選択する

3. 効果

色々な方法(コマンド)を試す「はなす」「たたかう」「ぼうぎょ」「てだすけ」「じゅもん」「にげる」「どうぐ」「なんでもないです」の中で有効だったのは、「てだすけ」=母と介護を分担することができた。

 

No.30 他人事(ひとごと)メソッド 研究者:大矢英明

1. 苦労の場面

目標がなくなると不安定な状態になる

2. 自己対処(スキル)

自分が困ったときに自分で自分に解説(ナレーション)を入れることで客観視することができる

3. 効果

「他人事メソッド」を使おうとした時点でもう困ったことの7割型は解決している。「いいかげん」で楽しみながら問題に向き合うことができる。