研究者:渡辺さや可
自己病名:「体育会系がんばり症候群なんでもF1タイプ」
● 苦労のプロフィール
スポーツに人生の大半を費やしてきたので、とにかく頑張ることが止められず、諦めるとか立ち止まることのないまま発病し、いつも問題行為を繰り返し、7年間入院していました。
● 自分いじめのフルコースの紹介
前菜(食前酒) → 異性問題、親子関係、金欠
メインディッシュ → 食べ吐き、リストカット
デザート → ソーシャルワーカーに電話、メール
● メインディッシュに持っていくために…
・悲壮感、虚しさ、淋しさをメインディッシュに持って行きやすいように溜め込む。(食べ吐きやリストカットをしやすくする)
・金欠状態を作り出す。
● 仕込みとして有効な材料
虚しさ、さみしさ、孤独、イライラ、情けなさ
● 材料の集め方
・なるべくそういう感情が誘発されるような場所に行く
(例えば札幌のような街中の方が孤独感とか淋しさがつのる)
・携帯音楽プレイヤーとかを持ち歩いて外部との接触をなるだけ避ける
・限りなくお金の使う(通信販売にはまる)
● 入院までの流れ
虚しさ、さみしさを仕込み、前菜、メインディッシュを食べ、お腹一杯になったところで入院。浦河に来てからはメインディッシュのあとにデザート(ソーシャルワーカーが話を聞いてくれる)が付くようになり、そちらの方がおいしくなった。
● 回復へのとまどい
今では回復へのとまどいがあり、 前菜からメインディッシュの流れに助けられていた部分があった。そこで、問題を起こそうとする思考が無意識に働き、問題がない状態、エピソードがないという平穏な感じが怖かった。
● 今までの自分の助け方と浦河に来てからの助け方の違い
札幌にいた頃は大声を上げたり、暴れたりして、その都度入院を繰り返して来た。
浦河に来て、今までと同じ手を使ったところ、スタッフが見事に巻き込まれ、3人くらい犠牲者がでる。
「これはいけるぞ」と思ったが2回目以降まったく通用しなくなった。とにかくほっとかれた。浦河は問題をおこしても、注射もないし、保護室も入院もない。
今までは自分の問題を入院とか注射とかで医療者や親が全部対処してくれていた。今度は自分の問題は自分で対処して、責任を持たなければならなくなった。
● 浦河に来て自分が上手になったところ
仲間と話すのがうまくなった。
今は自分で考えて、悩んで、話すということで自分の苦労に対処しようとしている。(今までは入院していても誰とも話さずに暴れるときだけ喋りだすという感じだった)
浦河の仲間とそういう苦労を語り合ったりしている。
● 今後の研究テーマのポイント
自分の助け方、問題が起こったときにどう対処するか、また問題の予防的な対処法
● 感想
今になってやっとこの7年間のことを振り返れるようになった。今まではただただ、いかにメインディッシュに持っていくかと言うことばかり考えていたが、でも浦河に来てまったく違う支援体制のところに放り投げられた時に、その「いつの間にかメインディッシュを欲しがってしまう自分」にどう対応していくかをすごく考えるようになった。また、当事者研究をしたり仲間と話したりするうちに、自分もそういう支援の仕方を受け入れることができるようになってきた。
今では仲間とのつながりをつよく感じています。