研究者:吉井浩一
自己病名:自分のコントロール障害
会話をしていたら、相手が怒り出してしまい、『自分はチャッカマン(相手の感情を爆発させるきっかけを作る役)なのではないだろうか』という“お客さん”(マイナスの自動思考)が来た。
今回の当事者研究ミーティングでは、マイナスのお客さんの根本にあるココロの看板の確認と書き替えにとりくんだ。
以下の「お客さん」、「看板」とは、浦河では、
お客さん・・・自動思考のこと。気がつかないうちに働きだしてしまう思いや、出来事に対する考え方の呼び名。仲間に公開(「こんなこと思っちゃったのだけれど・・・これって“お客さん”かな?」など)すると、「それ、お客さんだよ。」と応えてもらえたりする。出来事と自分を切り離して、眺めたり、考えたりすることにも役立つ。
マイナスのお客さん(ネガティブ、否定的な思考)と、プラスのお客さん(肯定的な思考)がある。
看板・・・自分に対するイメージ、認識、言葉。
■苦労のプロフィール
自己病名は、自分のコントロール障害。
20歳で自ら精神科を受診。家族関係で苦労してきた。 専門学校在学中(20歳)に、リストカットと大量服薬を止められなくなって、自分のコントロールがうまくいかなくなった。
2001年11月に浦河に来てからも自分のコントロール障害は続いていた。半年後、自己虐待の研究を始める。アライブ(自助グループ)に参加して、自分のことを語りだしてリストカットが止まり、その後『日本語会話教室』(お客さんとのつきあいや、自己表現に苦労を抱えたメンバーが取り組んだ自助グループ的な集まり)に参加する。自然と薬の量が減っていき、現在は服薬していない。
自分の支え方の研究をして今に至る。
■研究の方法
当事者研究ミーティングに参加し、苦労の発表をするなかで、「看板の書き替えをしよう」という提案をきっかけに、今までの看板を新しい言葉に替えていく作業にとりくんだ。
■今までの対処方法
2年ほど前は、自分の爆発を理屈づけして合理化していたが、自分以外のことに原因を求めると、自分の成長が止まってしまうということに気づいたことや、他メンバーの「人のせいにするって楽だよね」という言葉をきっかけに、自分を変えたいと思った。
■今までの看板
会話をしていたら相手が怒り出してしまったなど、人との関係がうまくいかなくなった場面では、
「いつもそう……」
「どうせ私が……」
という看板(一般化)で自分や周りに起きていることを眺めていた。
■新しい看板
「マイナスのお客さんばかりではなく、プラスのお客さんにもスポットライトを当てよう」という提案により、当事者研究ミーティングで仲間と一緒に新しい看板を探した結果
「浦河で私は(生き生きと)やっていける」
「いつも仲間にかこまれている、つながっている」
「今日もみんなに話を聴いてもらった」
「気がつけば笑顔の自分がいる」
「僕なら必ず笑いに変えられる」
「俺、一人じゃない」
「俺は仲間の一員だ」
という言葉が挙げられ、自身のベスト3(上から3つ)を選んで実際に仲間にささやいてもらった。
■結果と考察と展望
新しい看板に書き替え、仲間にささやいてもらったことで、
・嬉しい気持ち
・むずがゆい気持ち(新しい看板に慣れていないから)
などが出てきている。
予想される苦労…ゆりもどしが順調に来る
今後は、いろいろな苦労があっても、仲間と笑っていたい、仲間と苦労を重ねていきたい、人のなかで安心を感じていきたいと思っている。
■メンバーのコメント
常に人の中で居場所を探してた吉井さんを、最近、ニューべてるの中でよく見かける。
昆布作業の中や、発送チームで働いている。
そんな吉井さんの中に新たな言葉が生まれつつあることが仲間として嬉しかった。
これからも吉井さんを応援したいと、みんなが思っている。